2005.7.23
梅雨が明けたか。
「パソコン、嫌い!」と、そこらじゅうで言いふらしている私だが、
このところ珍しくパソコン活動に精を出している。
なぜそんなことになったか。
ひとつには、
いまどきのティーンよりも切れやすかったうちのADSLが、
今月に入ってから、なぜかすっかり落ち着いた風情。
おかげで私も数々のわだかまりが解け、
また一から始めようね、ぼくら。
というムードである。
あるいは、
久々に息子の笑顔を見て調子に乗り、
「どうだ。 久しぶりに、キャッチボールでもやるか。」
とでも言い出しそうなムードである。
「バカじゃねえの。 一人でやれば?」
と、ムゲにされることすら嬉しい。
そういう気分である。
前置きが長くなったが。
そんなわけで、私はけっこう意気揚々と、自分のホームページの更新を始めた。
ところで。
このホームページだが、私にとってこれは、当然職業ではない。
そして、趣味でもない。
じゃあなんだと聞かれても困るが。
しつこく乳繰り合っていたかと思うと、
突如放置プレイに走ったりもする。
でもだからといって、
いいかげんな気持ちでおつきあいしてるわけじゃないんだ、ぼくら。
そういうわけですんで、ひとつよろしく。
このままだと、前置きだけで終わってしまうので、先に進める。
とにかく、これを始めて一年近くが経つが、その間常々疑問に思っていることがあった。
それは、
「他の人のホームページは、なんでそんなにページが縦に長くつながってるの?」
その思いは、ホームページに載せたいあんなことやこんなことが思い浮かぶたび、
日々膨らんでいった。
ああ、ページが縦につながりさえしたら、私だって…。 私だって!
そう、私は、○○が××でさえあれば△△なのに、という、
典型的無いものねだり的いちびり状態に陥っていた。
むろん、何も手を打とうとしなかったわけではない。
大嫌いなマニュアル本を開き、何度もそれらしい項目を探した。
「ぺ、ぺ、ぺ…ページを縦につなげる…。」
が、いくら探しても、そんなものはどこにも書いてない。
嘘だ……。 私は呆然とする。
だってみんな、あたりまえのようにページが縦につながってんじゃんよー。
私は苦笑する。
きっと見逃したんだな。
あまりにも初歩的すぎて、思ったよりぜんぜん前のほうに書いてあるんだよ。
「ホームページは何でできているのか知りたい」
そんな根源的なこと、知りたくもないわ!
「とにかく文字を入力するには」
「答 : 好きなところでクリックして入力する」
……。 もうちょっと後ろのほうかな。
「画面を分けてかっこよく表示したい」
…いやべつに。
とにかく無かった。 その日も。
「ふう。」 私は、このことに関して何十回目のため息をついた。
しょせんここまでか。 こんなもんだよ。 オレの人生。
こうやって、与えられたワクの中でなんとかやりくりして、それなりに楽しんで、
そうやって、いつのまにか老いぼれてくのさ。
スライダースでも聴こうかな。
私はうつろな目で、しかし手は惰性でマニュアルのページを繰る。
「ページのサイズを自由に決めたい」
そうそう、これが一番近いんだけどね。
でもべつに、ページのサイズをでっかくしたいわけじゃないんだよなあ。
が、ほかにやることもないので、私はなんとなく、気力の失せた指で適当に数字をいじってみる。
……あ。 え。 …まさか…。 のびる! ページがのびる!
う…うぉ…ウ…ウォー……ターーー!!
瞬間、私の中を、ヘレン・ケラー的フリーダム感が突き抜けた。
自由だ!!!
私は高揚感の命ずるまま、とりつかれたようにどんどんページをのばしてゆく。
その狂乱の宴は、文字通り寝食を忘れ、実に三日三晩つづいたのだった。
と、そんなわけである。
私のように意固地な人間は、とかく固定観念にとらわれやすい。
時として、固定観念にとらわれてはいけないという固定観念にとらわれたりもする。
天邪鬼が暴れ、いろんなものをだいなしにして、途方にくれたりもする。
実直さが、かえってそれに追い討ちをかけたりもする。
が、ヘレン・ケラー的フリーダムは、そんなやつに、突如プレゼントのように訪れる。
私の仕事は、ただそれを正座して待ってりゃいいだけだったりする。 本当は。
だから楽なもんよ。 本当は。
ただ開けてみて、どんなに予想外のブツが入ってても、
返品できないのが難点。
調子に乗って長すぎた。
次回は短く。